解説: 画素の流れ — 「4Kカメラ」でも見えないことがある理由
遠隔巡視で「見えるかどうか」を決めるのは、カメラのカタログ解像度そのものではなく、確認したい対象に最終的に割り当たる情報画素の数です。 このページでは、画素がセンサーからモニターまでどう流れ、どこで減るのかを順に説明します。
1. 全体像 — 画素は増えない
対象の画素は「① センサーに映る → ② 配信(Stream)で送られる → ③ モニターに表示される」 という一方通行の流れをたどります。それぞれの段階で画素は減ることはあっても増えることはありません。 最終的な判別は、この鎖の一番細いところ(ボトルネック)で決まります。
図1: 画素の流れ。②の縮小がボトルネックになる典型例
2. ステップ1: レンズとセンサーが「映る範囲」を決める
センサーの幅(Sw)と焦点距離(f)で、カメラの水平画角が決まります。 広角レンズは広く映せますが、その分 1m あたりに割り当たる画素は減ります。
図2: 標準例(Sw 6.4mm・f 4mm)の幾何。この組み合わせで画角は約 77.3°
3. ステップ2: 距離が「実物への画素割り当て」を決める
センサーの画素は、映っている範囲全体に配られます。 対象が遠いほど 1 画素が受け持つ実寸が大きくなり、実物 1m に割り当たる画素(画素密度 px/m)は 距離に反比例して減ります。
図3: 同じ 1m の対象でも、5m 先では 240px、20m 先では 60px しか割り当たらない(FHD 配信の例)
4. ステップ3: 配信・処理が画素をさらに減らす
現場のカメラ映像は、通信量を抑えるためにカメラ内で縮小・圧縮されてから配信されます。 4K センサーでも配信が FHD なら、対象の画素は配信の時点で半分になります。 本アプリの評価がカタログ解像度ではなく「実運用の配信解像度」を使うのはこのためです。
図4: 配信縮小後の情報画素は、モニターで拡大しても戻らない(デジタルズームは引き伸ばし)
5. ステップ4: モニターで人が判別する
最後に、残った情報画素を見て人が判断します。何を確認したいかによって、必要な画素数は変わります。
図5: 同じ人でも、割り当たる情報画素が少ないと「居ること」しか分からない
| 確認レベル | 内容 | 必要な短辺画素(目安・仮設定値) |
|---|---|---|
| L1 | 存在確認(何かが居る) | 約 20px |
| L2 | 状態確認(動いている・倒れている) | 約 40px |
| L3 | 作業確認(何をしているか) | 約 80px |
| L4 | 詳細確認(装備・手元) | 約 160px |
| L5 | 文字・計器確認 | 約 240px |
必要画素数は照度・圧縮・対象の色などに左右されるため、この目安は実機検証前の仮設定値(ASSUMED)です。 導入判断の前に、実際のカメラ・回線での確認(実機 PoC)を前提にしてください。
6. 体験: 距離と配信解像度で画素密度がどう変わるか
カメラは本アプリの汎用カメラ既定値(センサー 6.4×3.6mm・4K・焦点距離 4mm)。 対象は幅 0.5m(人の肩幅相当)です。計算はアプリの評価と同じ計算エンジンで行っています。
7. 本アプリの評価はどこを見ているか
- カバレッジの塗り分け・判定は、配信(Stream)基準の画素密度が 要求値(既定 100px/m・仮設定値)を満たすかで行います
- デジタルズーム・拡大表示は情報画素を増やさないため、評価には使いません
- 360度・180度カメラは、デワープ後のパノラマ解像度から「角度あたりの画素数」で同様に評価します
- 建物などの遮蔽物に隠れた場所は、画素密度に関係なく不可視として扱います
計算式の詳細と前提は、リポジトリ内の計算仕様書(methodology specification)に記録されています。 このページの数値例・体験コーナーは、アプリの評価と同じ計算エンジンから算出しています。