解説: パノラマ — 360度・180度カメラの見え方
360度カメラは「1台で全部見える」と言われますが、見える範囲と 見える細かさは別の話です。パノラマの評価は画角ではなく 「角度あたりの画素数」で決まります。
1. パノラマは「帯」に開いて考える
360度カメラの映像は、デワープ(歪み補正)後に横 1 枚の帯として扱えます。 帯の横幅がそのまま 360 度分なので、1 度あたりの画素数はどの向きでも一定です。 固定カメラのように「正面だけ細かい」ということはありません。
図1: 全周を帯に開く。横幅 ÷ 360度 が角度分解能
角度分解能 [px/deg] = パノラマ横画素数 ÷ 水平カバー角 [deg]
画素密度 [px/m] = 1ラジアンあたりの画素数 ÷ 距離 [m]
画素密度 [px/m] = 1ラジアンあたりの画素数 ÷ 距離 [m]
2. 同じ 4K でも、固定カメラより粗い
3840px を 360 度に配ると、角度分解能は 10.7 px/deg です。一方、FHD(1920px)の固定カメラでも画角が 78 度程度なら 1 度あたり 24px 前後になります。全周に配るぶん、同じ距離での画素密度は下がります。
| カメラ | 横画素 | 水平カバー角 | 角度分解能 |
|---|---|---|---|
| 360度パノラマ | 3840px | 360° | 10.7 px/deg |
| 180度パノラマ(同じ横画素) | 3840px | 180° | 21.3 px/deg |
| 固定 FHD(f4mm・1/2.3型相当) | 1920px | 約 77° | 約 25 px/deg |
同じ横画素数なら、180度カメラは360度カメラの2倍の角度分解能になります。 本アプリが 360 度と 180 度を別の種別として扱うのはこのためです (180度魚眼を360度として登録すると、画素密度を 2 倍に過大評価します)。
3. 切り出しても画素は増えない
パノラマから一部を切り出して表示する操作は、帯の一部を取り出しているだけです。 切り出す画角を狭くすれば画面に大きく映りますが、その範囲に元から割り当たっていた画素数は変わりません。 デジタルズームが情報を増やさないのと同じ理屈です。
4. 体験: 距離と切り出し角で数値を見る
360度4K の画素密度
61px/m
固定FHD(f4mm)の画素密度
120px/m
切り出し 90° の横画素数
960px
角度分解能 10.7 px/deg (3840px ÷ 360度)。距離 d での画素密度は「1ラジアンあたりの画素数 ÷ d」で求まります。 値はすべてエンジンの計算結果です。
5. 本アプリでの扱いと使いどころ
- カバレッジ計算では、360度は全周、180度は正面半周を可視範囲とし、画素密度は角度分解能から求めます
- 属性・レポートにはピンホールの HFOV ではなく 「水平カバー角・角度分解能・切り出し画角」を表示します
- 極付近の歪み・真下の死角(ドーナツ状の未撮影域)は計算に含めていません(近似)
使いどころは近距離の広い範囲です。出入口・詰所まわり・ 資材ヤードの全体把握には有効ですが、遠方の細部確認には向きません。 遠方は固定カメラの望遠側や PTZ と組み合わせるのが定石です。